テレビ番組のPRスポットで、久々にザ・デストロイヤーを見た。

わたしは一度だけ、ザ・デストロイヤーを見たことがある。
そんなに大昔ではない、でもだいぶ前。10年くらい前のこと。
都心の住宅地でお蕎麦屋さんを探していると、ザ・デストロイヤーとその妻と思しき女性がマンションのような建物に向かって歩いていた。
ちょっと買い物してきた帰り、といった様子で、着ていたものもふつうの開襟シャツだった。

「プロレス見に行ってじゃなくて?よくザ・デストロイヤーだって判ったね。」
「だってマスク被っているじゃん。」

このあとわたしはいつも、予想外のリアクションに遭遇する。

「興業でもないのに、マスク被ってるわけがないじゃん。」

そんなことを言われようとは。

以下のようなことを言われるのなら、まだ解る。

「ほんとにザ・デストロイヤーだった?マスカラスだったんじゃないの?」

ミル・マスカラスではないなあ。だって、目や鼻の周りをパイピングしてあるいつものマスクだったし、マスクから出ている鼻の感じも、ザ・デストロイヤーだったねえ。一緒にいた女の人の年齢の感じや、本人の体型なんかも、マスカラスってふうじゃないなあ。おんなじ理由で、ドス・カラスでもないよきっと。

と、返す言葉は事欠かないのだが。

プロレスにはまったく詳しくないので、他のマスクマンを出されると、ちょっと困る。

誰に話しても、たいがい、それはおかしいと言われる。あんまり言われ続けるのでだんだん自信もなくなってきたが、それでもやっぱり、あれはザ・デストロイヤーだったのだと思う。

ここまできて、ふと思い立って例のウィキペディアを見てみた。すると、親日家のザ・デストロイヤーはたびたび来日し、町のお祭りに参加しているという。それはわたしがお蕎麦屋を探してさまよった、まさにその町であった。
また、同じくウィキペディアには、「マスクをしたまま自動車を運転しているところを目撃されている」という情報が。

家から一歩外に出たらマスクマン、それがザ・デストロイヤーであるとわたしは思いたい。

親しみをもって呼びかけるには凄い名前だ。ザ・デストロイヤー。

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