あったかくなってきました


何をやってもうまくいかない日、というのがある。
「あしながおじさん」の中で、寝坊から始まってろくなことがなかった日の、不意うちの筆記試験のくだりがある。
試験は、黒板に書かれた詩について説明をせよ、というもの。

その詩というのが、十刷ではこう。

「われは何をも求めず/何をも拒まざりき
わが生存を代金として支払えば/偉大なる商人はほほえみぬ。

ブラジル?商人はわが方も見やらず/ボタンをくるくる廻しつつ
マダムよ今日は何ぞほかに/ごらんに入るるもの候わずや?」

百刷はこうだ。

「私は何もほしがらず/何もことわりませんでした
代金として私の生存を支払うと/偉大なる商人はほほえみました

ブラジル?商人は私の方を見もせず/ボタンをくるくる回しながら
奥様今日は何かほかに/お目にかけるものはございませぬか」

なんだか解ったような解らないような。
しいて言えば、十刷のほうが詩らしい気がする、というくらい、詩というものが解らないわたしである。

この詩は作者の創作なのだと思っていたが、そうではなかった。
ネットで検索すると、いろいろな人が話題にしていた。
アメリカの詩人エミリー・ディキンソンの作品だそうである。

学生の頃、ディキンソンをモデルにした一人芝居「アマーストの美女」を見た。(上演期間 1987年10月20日~25日、PARCO SPACE PART 3)
お芝居が好きだったのではなく、ディキンソンのファンだったわけでもなく、たまたまである。
出演は岸田今日子。

岸田今日子は好きな女優だ。
当時すでにベテランで、テレビではいつも淡々としている印象だったが、間近で見ると、一人芝居ということもあってたいへんな熱演だった。

岸田今日子の出演ドラマで忘れがたいのが、「秘密の花園」だ。
これは日曜日の昼下がりに唐突に放映された単発ドラマで、母(岸田)と姉妹(小林聡美と京野ことみ)に姉の不倫相手(塚本晋也)が登場するお茶の間コメディ。
エンディングに何故か、小林聡美がドレス姿で「ろくでなし」を歌っていた(確か)。
塚本晋也の益体なさ加減が素晴らしくて、もっとテレビに出てほしいと思ったのだ。

岸田今日子が亡くなったとき、本当に惜しいと思った。

ディキンソンは、死後に作品が世に出た人である。生涯単身で、ひっそりと暮らしたが、情熱的な詩をたくさん残しているそうだ。その生涯については、最近になってからも新聞で研究結果が報じられていた。

観劇も読書も、特別わたしの趣味ではない。
仕事が忙しいと新聞を読む時間もないまま一日が終わってしまい、時間があればなあ、と思ったりする。
が、そのわりに仕事がひと段落しても、とくに何もしないまま終わってしまったりする。

意識的に情報を得ないとだめですな。「ぴあ」とか読まないと。


ないのか、「ぴあ」

コメント