わたしは社長。名前は、いちおうある。

それはまだ語らない。

「今度リオちゃんがデビューするでしょおねマスの、CD予約しといてよ」
専務の但馬が立ち上がる。
「リオちゃんて、前にもデビューしませんでしたか?CD出してますよね。社長持ってますよね」
わたしは言う。
「何回だってするさデビュー。今度の曲はどんなかなー。前のよかったよねー。プロモかっこよくてさー。さすがりおっち。タイトルだけ見ると、ロッドのカヴァーかねえ」

「えっ!」
「どした、近江課長」
「ロッドって、NBAのデニス・ロッドマンすかっ!歌出してんすかっ?」
「ちげえよ。知らねえよ」

「するってえと」
「なんだい米沢係長」
「アメリカのあの伝説的テレビシリーズの脚本家でありホストとしても出演、放映時の声の吹き替えを、ムーンライダーズの鈴木慶一・博文の父である鈴木昭生が担当したという」
「ピンポン」
「社長!」
「ロッド・サーリング!って、んなわけねえだろ」

今どきの若い奴らは、ロッド・スチュアートも知らないのだ。
わたしは世代間格差というものに、いささかの怖れを抱いた。

「あ、あの社長」
新採の松阪だ。
「ウィキペディアでは『ロッド・スチュアート』ですとですね、『ロッド・スチュワート』へ転送されます」

わたしはマネジメントというものに、いささかの不安を覚えるのだった。

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