始業前の雑談から


4月から配属が変わった。
つとめて同僚と雑談などしている。

うっせえばばあ、などと思われていないことを切に願う毎日。

それはさておき、ポール・マッカートニーが来日するが行けないなあ、など話したところ、同僚の若手からこんなことを言われた。

「ライヴって、CDの演奏よりどうしても落ちるじゃないですか」。
そこが残念、と。

そんなふうに考えてライヴに足を運んだことは一度もないが、彼の言わんとしていることは判る。

で、ふと思い出したのが、学生時代の知人。

マイアミサウンドマシーンの「コンガ」という曲のピアノが、ミスタッチが多すぎて聴いていられない、という。

彼女はピアノが得意で音感にもすぐれているそうで、バンドをやっている人に頼まれてギターソロの採譜をやっていると言っていた。
日頃Top40ヒットが好きでよく聴いているようだったので、そんなことを言い出すのが意外だった。

マイアミサウンドマシーン、別に素人バンドではないし、ノリ優先で間違っちゃったけどOKテイク!ってこともまさかないだろう。
結構パーカッシブなピアノ演奏で、この曲の象徴的な部分である。
すくなくともわたしには、こういう音楽だとしか聴こえない。

知識があるってのも、不自由なもんだとそのときわたしは思った。

録音されたものがお手本で、ライヴはそのおさらいである、などということがあるわけがない。どっちがいいなんてことはない。
むろん、お金を返せとは言わないが、なにか納得がいかないライヴもあることはあるが、別に、もっともミスの少ない演奏を聴きたいわけではないのだ。

そもそも、演奏されるために作られているのが音楽じゃないか。

最近、トッド・ラングレンの"2nd wind"をよく聴いている。
聴衆を前に録音されたライヴレコーディングで、聴衆の反応は制約されていて殆ど聴かれない。
お客さんの前で、バンドが一発録りをしているのだ。
けっこうな緊張感が感じられる。

トッドは、スタジオ録音盤のようなサウンドでありつつ、「客前じゃないと得られない、特別ななにかを併せもった作品」を目指した、と言う。

ライヴには何とも言えない、ファンタジックな瞬間がある。会場全体が、暖かい雰囲気に満たされる一瞬がある。
それが忘れられなくて、ライヴ会場へ足を運ぶのである。

参考 ポール・マイヤーズ『トッド・ラングレンのスタジオ黄金時代』(P-Vine BOOKs 2011)

コメント