気温40度もつらかったが、寒いのもつらい


寒いので早く寝ようと思ったが、放送していたので見てしまった。

鈴木清順監督「ツィゴイネルワイゼン」(1980)

テレビの表示だと、12時前に見始めて、終了時間が2時過ぎ。
こりゃあ途中で寝ちゃうかなと思ったが、意外や最後まで視聴。

時はたぶん昭和よりちょっと前、主要な登場人物は、大学教授の青地(藤田敏八)、友人でどういう生計状況なのか放浪者の中砂(原田芳雄)、大正浪漫な青地の妻(大楠道代)、中砂の妻(大谷直子)と後妻(やっぱり大谷直子)。

もっと官能的な映画化と思っていたが、それは直接には強調されてはいない。

門付けをする萬才師のシーンを見て、おもむろに寺山修司の映画を見ているような気になったのは、わたしの映画経験が貧困なせいだ。

藤田敏八に俳優としての印象があまりなかったが、すごくチャーミングな人だった。
節分のシーンで、「鬼はそとっ、福はうちっ」と一生懸命豆を投げる演技がなぜか印象的。

中砂の自宅へ赴くため、青地が何度となく行き来する切通しがそれは見事だ。

最後、中砂の娘にひかれて青池が連れて行かれるのは、骨についての中砂との約束を果たすためなのだろうか。

これが原作、ということだけ聞いて、内田百閒の「サラサーテの盤」はかなり前に読んだ。
妙な読後感の短編ではあるが、これがそんなに長編の映画になるのかなあ、と思った。

もっと前衛的で映像美的な、端的に言えば、わたしにはきっとわけのわからない映画なのだろうと思っていた。
インターネットで検索すると、あれやこれや、様々な解釈がされている。素晴らしい。

わたしにとって印象的だったのは、中砂に翻弄され、そのほかの人にも翻弄される、青池の終始困ったような表情だった。

それは、些細だがめまぐるしくやってくる出来事の数々や周囲のそれぞれの言動にからめとられて、わけのわからないうちに疲弊して、なにが本質なのか判らなくなって、日々わたしが困惑しているせいなのかもしれない。

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