読んだ本について記録する 11
ファーブ島に住みたいのお


ウィリアム=ペン=デュボア作 渡辺茂男訳 『三人のおまわりさん』 学習研究社 1965

「新しい世界の童話シリーズ」の一作。
むかしむかし読んだ記憶があるが、何歳ころ読んだのか覚えていない。
シリーズ中、他に読んだ本がないから、結構大きくなってからではないかと思う。

おさかな資源が豊富な島、ファーブ島。住民は漁師さんか漁師さんを引退し、魚の加工業に従事。
いちばんの魚釣り名人が市長さん。
市長さんの次に偉いとされる三人のおまわりさんは、なんでか魚釣りをしない。
彼らの自転車をメンテナンスする6歳の少年、ボッツフォードも魚釣りをしない。

おまわりさんは毎朝、市長さんの「おきろ!」等々というアナウンスで目覚める。
注意事項のすべてが、装いに関すること。
しゃきっと制服に着替える。
が、あまりに平和すぎて、彼らはおまわりさんの仕事がなく、ひたすら素敵な制服をつくることに日々を費やしている。
そんなファーブ島に、島の歴史始まって以来の大事件が起こる。

以前に読んだとき、気になって仕方がなかったことが数点あった。

その1 三人のおまわりさんが事件解決のため制作するものが、あまりにサイズ違いではないか。

これは、挿画を担当した柳原良平の画が、あんまりにも素晴らしすぎたがゆえである。
アンクル・トリスでおなじみの柳原良平の画は、当然日本版オリジナルであろうが、素晴らしい。
原版にもこれだけふんだんに挿画があったのだろうか。
海ものということで、なんとも生き生きとしている。
この制作のくだりだけ、ボッツフォードの手をあまり借りないのは、おまわりさんの制服作りの腕が生きているのだろう。

その2 どう読んでもおまわりさんが偉そうに見えない

これをいたいけな子供ちゃんに読ませてよいのか、と思ったが、これを読んでも読まなくても、きっと、子供というのはこういう意識を体験をするものなのだろう。

いろいろあって、おまわりさんは叙勲するものの、おまわりさんに使われる立場だったボッツフォードは、ボッツフォード1世となる。
おまわりさんのボッツフォードに対する態度がどう変化したのか、文面には表れない。
柳原良平の挿画には、あたたかい視線が描かれている。

エンディングの余韻がまた素晴らしい。

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