懐かしすぎるのだ


大学3年生のとき、同級生に「トッド・ラングレンの来日公演へ行かないか」と誘われた。

トッド・ラングレン、名前しか知らなかったが行ってみた。
1988年1月19日のことである。
1988年は、昭和63年である。
ちなみにこの前日、日産シーマが発売されたそうだ(出典ウィキペディア)。

会場は新宿の厚生年金会館。
舞台には2台のプロジェクター。
なにか凄いものが映るのか?と思ったものの、そんなに劇的な演出はなかった。
ちょっとサイケっぽいぼんやりした色彩の模様みたいなものが流れていたような。

ピアノかギターを弾きつつ、これまた何の模様なのかよく解らないピンクっぽい色彩のスーツを着たトッドが、ひとりで歌うコンサートであった。
"Compassion"はハンドマイクにカラオケ音源で、友人が「トッドのツーステップを見た」と喜んでいた。

この来日公演の一部がFM東京の番組で放送され、それを録音したカセットテープを、それこそ擦り切れるまで聴いたもんである。
"Can we still be friends"の歌いだしでピアノを弾き損ねてやりなおすのだが、それでもちょっと危ういのが可愛い。
御大、39歳(当時)である。

そんな青春のいちばんの思い出である来日公演を思わせるような映像が、本作品収録の1982年"Old Grey Whistle Test"である。
トッドひとりきりの単独演奏である。
"Compassion"、こっちは弾き語りで、ツーステップじゃないけどな。
御大、34歳(当時)のお姿である。

あのときのトッドより、いくぶんスリムな印象。
落ち着いた語り口のMCである。トッドの喋り声、素敵だ。

来日公演でも歌っていた"Lysistrata"は、戦争へ行かんとしている人の歌だ。
1982年のユートピアのアルバム「スイングトゥザライト」に収録された曲だ。
寝室のドアを開けてくれない彼の恋人は、「女の平和」の主人公である。
アリストパネスが「女の平和」を作ったのは、紀元前411年だそうである(出典ウィキペディア)。

「女の平和」は、いろんな意味で、たいへん興味深い戯曲である。
それにしても凄いところから題材をもってくるなあ。

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