邦題について考える
populationと習いましたよ。

1982年のビルボード年間チャートは、避けて通れない正念場である。
2位J・ガイルズ・バンド"Centerfold" →「堕ちた天使」
5位ヒューマン・リーグ"Don’t you want me" →「愛の残り火」
53位ダン・フォーゲルバーグ"Leader of the band" →「バンド・リーダーの贈り物」
これらは、歌詞の内容や曲のイメージとも相俟って納得の邦題。

今の時代だとないな、というのが以下の楽曲。
36位ジョー・ジャクソン"Steppin’ out" →「夜の街へ」
42位エア・サプライ"Even the nights are better" →「さよならロンリー・ラブ」
86位ジュース・ニュートン"Break it to me gently" →「やさしくしてね」
ジョー・ジャクソンの曲はまさに夜の街へ繰り出す高揚感を誘うような曲で好きだったのだが、シングルレコードサイズのジャケットあってのタイトル、という気がする。それなら「愛の残り火」もないな、なのかもしれないが。

シングルレコードのジャケットが好きだった。

そのほか、
30位ライオネル・リッチー"Truly" →「トゥルーリー(愛と測りあえるほどに)」など、参考文献を見て「え、ほんと?」と驚かされたものもあるのだが、個人的に忘れられないのがこちら。
28位メリサ・マンチェスター"You should hear how she talks about you"  →「気になるふたり」
いかにも売り出しにくい原題(の長さ)であるから、このシングル曲の邦題自体には何の文句もないのだが、収録されていたアルバムの邦題が、

「き・れ・い・だ・ね・メリサ」(原題は"Hey Ricky")
文字と文字のあいだの中黒も込みである。それまでの歌い上げる系(勝手なイメージだが)から一新、ショートカットにはっきりしたメイク、何か言いたげな表情のポートレイト・ジャケットとともに現れた、このタイトル。「全米トップ40」で初めて耳にしたときは、ラジオに向かって思わず聞き返した。

これは、驚愕のイメチェンで洋楽ファンを震撼させた(おおげさ)オリビア・ニュートン=ジョン("Physical")、さらに遡ればジェーン・フォンダ「ワークアウト」に祖を見る、エクササイズで若返ってしまった系なのか・・・と当時は思ったものである。
現在CDで販売されている上記のアルバムは、邦題も「ヘイ・リッキー」であるようだ。なんだかもったいない。

ところで、49位ソフト・セル"Tainted love" →「汚れなき愛」は、すっかり誤訳として定着している感があるが、「きたないはきれい」的な意味あいなのかな。

参考文献:フレッド・ブロンソン『ビルボード年間トップ100ヒッツ』(音楽之友社 1994)