超絶技巧を堪能する
超絶技巧を堪能する
これらは観賞用に作られたものなのだろうか?


昨日の記述、FM東京で放送されたのはわたしが見た翌日の20日のライヴだ。念のため。

もはや行きつけ美術館と化した佐野美術館へ行ってきた。

「超絶技巧!明治工芸の粋」(2014年12月23日まで)

なんといってもお目当ては、安藤緑山の牙彫である。
昨年5月25日放映「美の巨人たち」(テレビ東京)にて、度肝を抜かれた感のある、象牙彫刻作品群。
先に行われた東京展では、おのれの目を疑ってか、ガラスケースに近づきすぎて頭を打つ人多数だったと聞く。

まさかわたしも頭を打つとは思わなんだが。

もっとも、頭を打ったのは、牙彫ではなくて金工だったのだがな。
細密な仕事ぶりを作品横のルーペから覗こうとしたのだが、置かれた角度がいまいちわたしの背丈に合わなかったのである。

というほどに、金工にしろ七宝にしろ、細かい。
香炉に施された、立体的な鶏や蝸牛。器にこまごまと散らされた、一面の蝶。
これは実用とされたのだろうか。

お花の絵が描かれた花瓶にどんな花を生けるのかね、と聞いたところ、
同行の母いわく、「そのまま置いておくんじゃないの」とのこと。
掛け軸みたいなものなのだろうか。

薩摩焼というものを初めて見たが、帯のような渦巻模様に、花びっしり、蝶びっしり、大名行列、とこれまたこまかーく描かれている。

金属部品でできた蛇や昆虫、鯉などの「自在」。
その名のとおり、とぐろを巻かせたり脚を曲げたり、鯉ならば体をしならせたりできる。
高級な指ハブみたいなものか?違うか。
なににするものだったんだろう。

展示品に蒔絵の「残菜入れ」というものがあった。
「食事の席で食べ残しや骨などを入れて持ち帰るためのもの」との説明が。
お招きの必携アイテムだったらしい。
母は「ざんしょいれ」と言っていたそうだ。
持って帰るのだね。知らなんだよかあちゃん。

安藤緑山の作品は、聞きしに勝る素晴らしさだった。
蜜柑にしろ玉蜀黍にしろパイナップルにしろバナナにしろ筍にしろ、むしろ完成度が高すぎて驚嘆の声も上がらない。
「あ、バナナね。バナナだね」という感じだ。
母に「これは象牙でできており、彩色をしてあって」と説明したところ、びっくりしたのか帰りに茄子の牙彫のポストカードを買っていた。
これらも、いったいなににするために作られたのだろう。

もっとも驚嘆の声を集めていたのは、刺繍絵だった。
金の絹糸でまつられた孔雀絵屏風は圧巻だ。
絢爛豪華をまさしく地で行く作品である。
こういうのは、きっとお金がある人の邸宅に飾られたのだろうな。

しかし、蜜柑やバナナはいったい・・・。

安藤緑山の謎は深まるばかりである。

ついでと言ってはなんだが、韮山反射炉へも寄ってきた。

目にする機会の少ない工芸品の数々を見られたし、来年は本多忠勝「蜻蛉切」の展示もあるし、なかなかラッキーである。

ラーメン激戦区にも近いしな。