わがままは言うまい


銀座の映画館、シネパトスが3月末で閉館するそうだ。

銀座から歌舞伎座のほうへてくてく歩いていくと、おもむろに地下街がある。

なんか、変わった構造だ。駅の地下とかビルの地下とか、なにかのオマケ的にではなくて、地下街だけがそこにある(ように見える)。
街といっても、いたってこじんまりしている。
道路の下、いくつかの店舗と並んでシネパトスがある。

シネパトスへは、二回しか行ったことがない。
見たのは、「カポーティ」と「太陽」。

「カポーティ」は、『冷血』取材時のトルーマン・カポーティを描いた物語だ。
話が話だけに、あまり後味はよくない。
主演のフィリップ・シーモア・ホフマンは、この作品でオスカーを獲得した。
カポーティのある種の「いやな感じ」や「繊細な感じ」をうまく醸していたと思う。

「太陽」は、終戦前後の昭和天皇を描いているが、外国映画だ。
主演はイッセー尾形。
地下の一室での御前会議で、阿南陸相役の六平直政だったか、汗をだらだらとかきながら発言していたのが印象に残っている。


御前会議を描いている作品はほかにもいくつかあるのだろうが、わたしが見たといえる映画は、「日本のいちばん長い日」だけだ。
東宝創立35周年記念の作品で、たくさんの俳優(ほとんど男性)が出演した。
御前会議の様子をその場にいるつもりで見ていると、暑くて息苦しくて、気が遠くなる思いがする。

唯一と言っていい出演女優が、新珠三千代だ。
「細うで繁盛記」だ。
「銭の花はあこうどす」だ。
冨士眞奈美がいびり役で、変わった方言だなあ、と思っていたが、だいぶあとになって自分が住んでいる近隣の設定だと知った。
驚いた。

まあたしかに、あんな感じの喋り方だ。

シネパトスと細うで繁盛期、別に関係ないな。関係あるのかな。

結局シネパトスにはもう行けそうもない。
森下くるみにチケットをもぎってほしかった。
残念だ。